ローカルフリーランス日記

北九州地方に住むフリーランス。話を聴く人。イベント作り。創業機運醸成、防災、街づくり、引きこもり支援、博物館、フードイベント、句会、古代史研究会など。昔のことは→ https://works.toiroha.jp/500

憎悪無しにやってみようとしているだけ~読書『これで駄目なら』著:カート・ヴォネガット~

私が大学生だった時「ガツン!」と衝撃を受けた本の中に、『チャンピオンたちの朝食』という本がある。

まあ、恥かしいことを言えば、村上春樹がデビュー作である『風の歌を聴け』という小説を書いたときに大きく影響されたという話を聞いて、手に取った本だった。

詳しく書くのは別の機会にするが、この古き良き4番打者が「一発で決める感」みたいな感覚がとても印象に残っている。

 

カート・ヴォネガット 

その作者が、カート・ヴォネガット - Wikipediaだ。彼の本を全て熟読しているわけではないので、胸張って好きだと言えるわけではないのだが、最近本屋で新刊を見つけた。

 

若い君たちへー卒業式講演集

1978年(私が生まれた年!)から2000年くらいまでの、大学卒業式での講演を集めたものだ。

これで駄目なら

これで駄目なら

 

 

本屋で立ち読みしながら、パラパラとめくっていたのだが、 とても心に響いてくるので即買いしてしまった。

慣れていない人には、どこまでがジョークでどこまでが本気かわかりにくいと思うが、たぶんほとんどがジョーク。でもその中に、社会に対する優しい視点だったり、人間愛だったり、卒業していく大学生の未来に対する期待だったりが含まれている、と思う。

 

IF THIS ISN'T NICE,WHAT IS ?

邦題は「これで駄目なら」となっているが、原題はこれ。

ざっくり言うと、「これが良くないなら、他に何がある?」的な感じでしょうか。

 

ちょっと引用。

彼が人類について発見した不快な点の一つは、自分が幸せであるということに気づかないことだ。彼自身はというと、幸せなときにそれに気づくことができるようにと全力を尽くしていた。夏の日、私たちはリンゴの樹の木陰でレモネードを飲んでいた。叔父のアレックスは会話を中断してこう訊いた。「これで駄目ならどうしろって?」(2章より)

完全に、激しく、同意。

自分が幸せであることに(それが一部分だったとしても、一瞬だったとしても)気づくこと。それは凄く大切だと思う。

 

こん 胸に響くエピソードが満載の本だ。他にも引用して紹介しまくりたいけど、我慢してもうひとつだけ。

 

金の稼ぎ方・愛の見つけ方

1章はこんなタイトル。タイトルからして痺れる。んで、言ってるのはこんなこと。

 

ヴォネガットは、マスコミが「若者たちが無気力になっている」と伝えていることに対して、こう言う。

今の若者に足りないのは憎悪というビタミンだと。

「いつの時代でも憎悪が純粋なコカインの効き目をしのぐ」と。「ヒトラーは打ちのめされ、破産し、餓死しかけた国家を憎悪の力だけで復活させた」とも。

 

でも、もちろん、憎悪を肯定しているわけじゃない。

若者たちは無気力に陥っているのではなく、憎悪から快楽を得ることに慣れている人々からはそう見えるのにすぎないのではないかと思っている。

この一節を読んで購入を決意した。これが、僕がずっと抱えてきた世代間ギャップ(のようなもの)を、本当に端的に言い表した言葉だ。

 

なぜ、もう少し冷静に考えないのだろうか?

上の世代の人たちを見てきて(もちろん一部の人たちのことだが)政治の世界でも左とか右とかあって、罵り合っている(ように見える)けれども、なんで争わなきゃいけないの?国家歌わないことに、起立しないことになんの意味があるの?なくならない差別。いじめ。どっちだって良くない? で、「若者は元気が無い」ってバカなの?現実的に考えて、一番良い(と思われる)ところを探っていくのが大切なんじゃないの?

 

って思ってきてんだけど、こういう表現でしっくりくるんだなと。それも1978年、僕が生まれた年に、こんなこと言う大人がいたんだ。素晴らしい世界だな、と。

 

みんなは、居眠りしているわけでも、無関心なわけでも、無気力なわけでもない。単に憎悪無しでやってみようとしているだけだ。(略)君たちのやろうとしていることは素晴らしい。うまく行くことを祈っている。

という言葉でその講演は終わる。

 

この言葉を、同世代の皆に伝えたいと思って、このブログを書きました。

僕たちが実現しようとしている未来は、間違ってないんだ、と。

 

これから大人になる、大学生・高校生にも是非読んでほしい一冊だ。

必ず君の背中を押してくれる言葉に出会うことができる。

 

では、また。

 

 

追記:やっぱり言い足りないんで、続き書きました。