読書『忘れられた巨人』(カズオ・イシグロ) ~客観的な視点の重要性~
自分自身が見失いつつありますが、このブログは「中学生の成績アップを、学力・メンタルの両面からサポートする」ブログです。
では、今日も読書感想文です。っておい。
言い訳として「中学生に良質な物語にたくさん触れてほしい」と言っておきます。
いつも新作を待ち望んでいる作家、カズオ・イシグロ
いつも書いているのですが、
私の好きな作家さんのひとりに、カズオ・イシグロという人がいます。
日本の名前なのですが、れっきとしたイギリスの作家さんです。
日本生まれのイギリス育ち。両国の文化的背景を持っていることが、この作家さんの⑦魅力のひとつと言えるかもしれません。作品にもそこが表れているような気がします。
先日のジュンパ・ラヒリも同様なのですが、自分の背景にある文化がひとつではない作家さんに、心惹かれるのでしょうか。ただの偶然か。
読書「べつの言葉で」(ジュンパ・ラヒリ) 今生きている場所への安心感は普遍ではない
『わたしを離さないで』
観てないですけど『わたしを離さないで』という物語がドラマ化されてるみたいですね。けっこう重たい話だと思うんだけど、日本人が演じるドラマとして成立するのかな?
原作は、読み進めていくうちに少しずつ謎が解けていくような、それでいてすべては語られていないんだけど、とても面白い物語でした。こちらも、是非、本も読んでみて。ドラマを見ていなくても。
『忘れられた巨人』
で、最近、最新作の『忘れられた巨人』を読んだわけですね。(といっても昨年の4月に出版された本なのですが。)
給食のデザートは、最後に食べるタイプですので、すぐ読むのはもったいないな~と思っているうちに、結構な時間が経ってしまっていました。
読書というものは、「自分が読もう!と思った瞬間が、自分にとって必要なタイミング」だと、わりと本気で思っていますので、別に大丈夫なんですが。
今回はファンタジーの世界観
まあ、ロードス島戦記から銀河英雄伝説まで読み込んでいる、(たぶんわりとオールドで硬派な)ファンタジーの小説も大好物な私ですので、なんの抵抗もなく読めました。もちろん、作者の力量あってこそだとは思いますが。読めたというより、ページをめくらさせられた、みたいな。余計わかりにくいですかね。
アーサー王時代のイギリスが下敷きになった話ではありますが、その知識が無くても十分に読み進めることができます。
今回も、と言っていいのかどうかはわからないけど、始め、物語は全体像が良くわからないところから始まります。読み進めていくうちに少しずつ、我々の頭からも霧が晴れていくような感覚を味わうことができます。
良くわからなくても、読み進めてしまうのが、この作家さんへの信頼であり、作者の力量であることは疑いようもありません。
常に視点はひとつではない
たとえ戦争していたとしても、どちらが正義というわけではなく、どちらにも理由がある。だから戦争は終わらない。そこに束の間だけど、解決方法をふたつ、作者は提示する。それは、法で縛ることと、忘れらせること。
でもそれは束の間でしかなく、争いは続いていく。その耐え難い悲しみ。
それが、複雑性、ってことかもですね。これからもっともっと複雑な社会になっていくのかもしれません。
あえて中学生に伝えるとするならば、どんな人との関わりも、それが良いものであれ悪いものであれ、お互いに理由があるということを知ってほしいと思います。自分が持っている考え方も同様です。客観的に観察し、考え続ける必要があります。
本当に好きな相手に巡り合えた時、相手の立場になって考えるということ、それを忘れないようにしてほしいと思います。